「感覚が鮮明になるほど、かたちはぼやけていく」と語る作者・劉丹( Liu Dan)は、「不確かな」で定まらない対象を描くことを好む画家です。彼の作品には、往々にして文人画にも見られる供石(こうせき/鑑賞用の石) が登場します。本作では非常に乾いた筆を用いて、細かな筆致を施しています。その痕跡は紙の質感さえ透けて見えるほど薄いです。よく見ると、墨の色は濃い黒から淡い灰色まで様々な階調が使われていることが分かります。線も墨もあえて控えめに用いることで、作品を主流から際立たせています。